GENERATION 1
第1話

WRITTEN BY CHRIS SARRACINI [CHRISLOCK]
PENCILS BY PAT LEE [PATIMUS PRIME]
INKS BY ROB ARMSTRONG [ROBONUS]
BACKGROUNDS BY EDWIN GARCIA [EDWIN MAGNUS]
COLORS BY TheRealT!

翻訳・脚色 Dr.シグマ

さて、今日のトランスフォーマーは、内戦の続く南米のジャングルから物語を始めよう…。
午前3時42分。

兵士1「夜の見張りってのは辛いぜ。俺も眠りたいもんだよなあ。火はあるか?」

兵士2「ああ、だが、夜煙草を吸うのに将軍達がいい顔をしないのは分かってるんだろう」

兵士1「なあに、連中は今頃おねんねさ」

兵士2「ほらよ」

(兵士2、マッチ箱をよこす)

兵士2「早くしな、火で俺達の居場所が分かっちまうかも知れん。誰が見てるか分からんからな」

兵士1「へいへい、その話はもうさんざん聞いたぜ。小便に行くから見張っててくれ。そんくらいは許されてるんだろ?」

(用を足す兵士1の背後で、突然巨大な“手”が現れ、音も無く兵士2の体を握り潰した)

兵士1「ふう、なあマニー、ズボンを引っ張り上げるにも将軍様のお許しを得なきゃならんのか?」

(返事は無い)

兵士1「マニー? おいおい、ふざけるなよ」

(兵士2の無残な死体)

兵士1「こいつは…」

(その時、近くに巨大な“脚”がある事に気付く)

兵士1「うわああああああっ!」

(巨大な“脚”の主は兵士1を踏み潰し、さらに、ジャングルを巨大な爆発が襲った…)


オハイオ州クリーブランド。早朝。
仕事に出かけようとする青年、スパイク。

ダニエル(DANIEL WITWICKY)「パパ、まって!ぼうしをわすれてるよ!ぼく、パパのなまえをかいておいたんだ、これでなくさないよね」

スパイク(SPIKE WITWICKY)「ありがとう、ダニエル。お前がいなかったらどうなってた事か」

ダニエル「あたまぶつけちゃってたね」

スパイク「そういうお前はどうなんだい?パジャマを着たまま学校に…ダニエル?どうしたんだい?」

ダニエル「えーと、パパ…お客さんだよ」

ハロー(ROBERT HALLO)「おはよう」

スパイク「何か、御用ですか?」

ハロー「そう、君に…。中に入れて頂けるかな?」

スパイク「見ず知らずの人間を家に上げる習慣は無いのですが」

ハロー「では自己紹介としよう。私はハロー将軍。軍の戦争技術開発部門の責任者をしている。こちらはルー、私の友人の一人だ。さあ、もう見ず知らずの人間ではないだろう。中に入れて貰えるかね?」

スパイク「どうやらあまり選択の余地は無さそうですね。ダニエル、2階へ行ってなさい」

ハロー「座ってコーヒーでも頂きながら話したいのだが?」

スパイク「失礼ですが、これから仕事がありますのでね」

ハロー「万事手配はされている。君には…何と言うべきか…『休暇』が出されている。君の銀行口座にも滞りは無い筈だ」

スパイク「待ってくれ。一体何だって言うんだ?」

ハロー「では、コーヒーを頂くとするかね?」

ハロー「君は有名人だ、ミスター…」

スパイク「スパイクでいい」

ハロー「君は有名人だ、スパイク。私の部署でも多くの人間が君と話したいと思っているよ」

スパイク「何が言いたい?」

ハロー「私に同行して統合本部に来てもらう。君がノーと言えない種類の人間からの命令だ」

スパイク「それは一体誰なんです?」

ハロー「DWT部門(*1)はトップシークレットかつ、独立した政府の組織でね。誰にも答える事は出来ない。つまり、私が命じたという事だ。我々が関心を持っているのは全世界の安全保障だ。君はそれに役立つ重要な情報を握っていると我々は信じている」

スパイク「それで、もし断ったら?」

ハロー「すまない。もう少し分かりやすく話した方が良かったようだな。君に断るも断らないも無い。率直に言えば、私はこれを『頼んでいる』訳ではないのだ」

(*1)DWT部門:Development of War Technology=戦争技術開発部門のこと)


カナダ北西部。
午後1時21分。

(ジープに乗って雪原を移動する3人の男。後部座席に座る男は覆面をしている)

ビショップ(BISHOP)「あとどのくらいだ?」

ラザラス(LAZARUS)「もうすぐそこだ」

ビショップ「そうか、ミスター…」

ラザラス「ラザラス。そう呼ばれている。お前もそう呼べば良い」

ビショップ「では、ラザラス、私は必ずしも世界中で好かれている人間ではない。認めるが、この数年というもの、私の、その、政治的意図は…、誤解を受け続けている」

ラザラス「ミスター・ビショップ、私は貴方が誰で、何者で、何をしているのか知っている。それがここにいる理由だ。貴方はテロ…」

ビショップ「自由戦士だ」

ラザラス「ほう」

ビショップ「そして、自由戦士としては、ジープの後ろで、頭に袋を被されて、何処とも知れぬ場所に向かうというのは、あまり気分のいい状況ではないのだよ。同志からの強い勧めがなければ、飛行機から降りなかった事だろうな」

ラザラス「この計画は秘密にしていたからこそ成功した。ならば、乗り心地の悪さに対する無関心も理解して頂けると思うがね」

ビショップ「大層な話だな、ミスター・ラザラス。クライアントにはいつもそんな話をしているのか?虹の端にある宝物を手に入れたものと見える」

ラザラス「結果は見れば分かる」

ビショップ「見れば分かるか、とてつもない物だという事は聞いている、この私が信じ難いと思うほどな」

ラザラス「だからここに来たのだろう?私の計画の成果をその目で確かめるために」

ビショップ「売り主が品質の責任を取る事は無い。私の聞いた話が事実だとすれば、すぐにも取引に入ろう。だが、チェックもせずに商品を買う事は出来んのでな」

ラザラス「止めろ」

(運転手、ジープを止める)

ラザラス「さあ、ミスター・ビショップ。ここからは歩きになる。あと何分かで貴方の懸念も解けるだろうよ」

ビショップ「尾けられているかどうか気にかけんでいいのか?」

ラザラス「恐れる事はない。我々には充分な備えがある」

(歩いて行く彼等の背後で、ジープがロボットに変形していた…)
♪びぼばぼ!

ラザラス「間違っているとすれば訂正して欲しいが、ビショップ、公平に言って、戦争は貴方の人生の中で大きな部分を占めてきたのだろう」

ビショップ「そうだ。私が何処へ行こうとも戦争は追いかけて来るらしい」

ラザラス「そして、その中で貴方は多くの兵士を死へと導いて来た。そうだな?」

ビショップ「ああ…、そうだ。だが、時には勝利へと導いた事もある」

ラザラス「ほほう。しかし、その勝利は少なく、とても比べ物にならない。そうだろう?つまり、正直な所、リーダーとして、貴方の実績は歴史に残るには程遠い」

ビショップ「ここまで連れて来たのは私を愚弄するためか?」

ラザラス「違うな。何故貴方が敗北し続けているのか、それを理解してもらうためだ」

ビショップ「ほう?で、それは何だと?」

ラザラス「貴方の兵士は銃を持っている」

ビショップ「私の兵士が銃を持っている…ふむ。常識知らずと言われようが、銃は…」

ラザラス「貴方の兵士は銃を持っている。だが、兵士自身は銃ではない」

(ラザラスはそう言いながら一枚の紙を取り出す)

ビショップ「侮辱と取られる危険は冒したくないが、ラザラス…、一体何の話なのだ?」

ラザラス「私は未来の戦いの姿を見たのだよ、ミスター・ビショップ。その進化をな。考えてみるがいい、自らが完璧な武器そのものである兵士を。兵士は銃を持つ必要はない、何故なら、兵士自身が銃であるのだから」

(ラザラスは取り出した紙を折り始める)

ラザラス「あるいは、さらに強力なものだ。兵士は人間性によって何か出来ないという事はない、そんなものは持っていないからだ」

(ラザラス達、建物の前まで来る)

ビショップ「確かにそれなら…」

ラザラス「兵士には、戦士から武器へ…武器から戦士へ、一瞬のうちに姿を変える能力がある。これこそ戦いの進化というものだ」

(ラザラスの折った紙は鶴へと形を変えていた)

ジープの運転手「ここです。着きました」

ラザラス「覚悟はいいか?」

ビショップ「何に対してだ?」

ラザラス「宝物さ」

(ビショップの覆面を取る運転手。そして…)
足だけ・・・

ビショップ「こ、これは…私の考えている、あ、あれなのか?」

ラザラス「美しいだろう?」

ワシントン。
ペンタゴン。
午後3時38分。

(アークII墜落事故に関する新聞記事を読むスパイク)

女性職員「スパイク・ウィトウィッキーさん?」

(顔を上げるスパイク)

女性職員「用意が整いましたので、お入り下さい、ミスター・ウィトウィッキー」

(立ち上がるスパイク。その肩を掴む者がいた)

ラリー(LARRY)「あんた…。 気を付けなさい。この場所では信用できるものは何一つ無い。言葉はいつも何か別のものを表し、あるいは何の意味も無い事もある。ここにあるのは目に映る物ばかりではないんだ」

女性職員「ラリー? お客様を困らせるのはやめるように何度言ったかしら? 気になさらないで下さい。彼、少し耄碌していて、下らない事を話すのが好きなものですから」

スパイク「え、ええ、そのようですね」

戦争技術開発部門司令部。

ハロー「ようこそ、スパイク。ここが我々の、世界に対する窓だ。この緑の地球上で起こる事で、我々の衛星が捉えられない事は多くない」

ハロー「君の弟さんはどうしているかね?」

スパイク「何ですって?」

ハロー「君の弟のバスター君だよ。彼は息災かね? 99年の悲劇には皆が悲しんだが、君の弟さんには特に辛いものだったろう。葬儀での彼の取り乱しぶりはまだ記憶に残っているよ」

スパイク「それは僕も同じです。父は良い人間でした。父は…いえ、あの船に乗っていた誰もが、あんな形で死を迎えるべきではなかった」

ハロー「そう、悲劇だった…」

スパイク「人の古傷を抉るような理由が何かあるんですか?どうして私がここに連れて来られたか、何故話してくれないんです?」

ハロー「おほん、そうだ。スパイク、私の目的は君の古傷を抉る事ではない。99年の悲劇が、君がここに来た理由の多くの部分を占めているというだけの事。君も良く知っているように、99年の航行は人類の進化上の一大事件になる筈だった。人間が初めて他の惑星の知的生命体を研究する機会を得た。それも、トランスフォーマーというあの超生命体をだ!クルーがセイバートロンに着いていたなら、今日、我々の世界はどれほどの発展を遂げていた事か」

スパイク「ええ、ええ、ええ、でも、彼等は帰って来なかった」

ハロー「その通りだ、スパイク。あの船に乗った全ての人、あの船にあった全ての物は消えてしまった。それは、君も私も知っている。世界中の新聞がその事を伝えた。(兵士達に)例の映像を出したまえ」

(大画面に森林の燃えている様子が映し出される)

ハロー「この映像は、昨日の深夜、我々の衛星の一つが捉えたものだ。10年近くに渡って、南アメリカの反政府組織の一団が現地政府を打倒しようとしているが、これはそのメインキャンプだ…いや、だった」

スパイク「これが一体何だと…?」

ハロー「画像を拡大したまえ」

(拡大される画像、その炎の中心にいた者は…)

スパイク「メガトロン…」

ハロー「傷口も閉じたままではいられないだろう」


(カナダ北西部、ラザラスの工場。メガトロンを前にするラザラスとビショップ)

ビショップ「おお……、全く、素晴らしいという他無いな。つまり、この…この…巨人達をコントロールする事が出来ると言うのか?」

ラザラス「完璧なコントロールだ。我々のコントロールメカニズムは、特定の目的を予めプログラムに組んでおき、それを順に彼等の中枢知能に処理させる。これは特に重要な事だ。つまり、我々は彼等の知能を全部閉ざした訳ではないのだ。一定の演繹技能を有しており、プログラムした目的が完璧なら、臨機応変な判断も可能だ」

ビショップ「すると、言われた事だけをこなす、知能ある殺人マシーンという事になるな」

ラザラス「その通り。さらには各兵士には、私の声にだけ反応するメカニズムが組み込まれている。実際にお見せしよう。サブジェクト6、起動しろ!」

(立ち上がるメガトロン)

ラザラス「案ずる事は無い。私がそう望んでいる限り、彼は無害な存在だ。サブジェクト6、左腕を上げろ!」

(左腕を上げるメガトロン)

ラザラス「サブジェクト6、右腕を上げろ!」

(左腕を下ろし、右腕を上げるメガトロン)

ラザラス「サブジェクト6、私の前に跪け!」

(メガトロンは立ったまま動かない)

ラザラス「サブジェクト6、繰り返す、私の前に跪け!」

(動かないメガトロン)

ラザラス「ああ、ちょっとした欠陥だ。学習プロセスの一環に過ぎない。この一体は部下に命じて配線し直す事としよう。気にする事は無い、昨日も南アメリカのクライアントの要請で大規模な撲滅をしてきたところだ。些細な欠陥に過ぎんよ。サブジェクト6、機能を停止しろ!」

(元あった場所に戻るメガトロン)

ラザラス「こちらへ、ミスター・ビショップ。見せるべきものがまだ沢山ある。見学は始まったばかりだ」

(彼等が出て行った後で、機能停止した筈のメガトロンの目が不気味に光った…)
その瞳に映るものは・・・?


『エリア24: 権限者以外の立ち入りを禁ず』

ハロー「では、スパイク、これが我々がまとめたところによる事実だ。アークIIの爆発で、トランスフォーマーが完全には破壊されていなかった、これだけは明らかだ。だがより厄介な問題は、何が…、あるいは誰が…、彼等の復活をもたらしたのか、だ。昨晩メガトロンの襲った標的から判断するに、外部の団体が彼と行動を共にしている…恐らくは、彼をコントロールさえしているのではと、我々は睨んでいる。それ以外にあの攻撃を説明できる理由は無いからだ」

スパイク「つまり、貴方は何者かが墜落したトランスフォーマーを復活させ、操るのを危惧していると?」

ハロー「断言できる証拠は無い、まだな。もしそれが現実だとすれば、事は完全に隠密のもとで行われた事となる。だが、相手が何者であろうと、我々の対抗出来ない超軍団を作り上げるのを座して待つ訳にはいかない。そのために君を訪ねたのだ」

スパイク「僕を?」

(ハロー、暗証番号を押して建物のロックを解除する)

ハロー「過去におけるウィトウィッキー家とトランスフォーマーの関わりは、国も良く知るところだ。我々の持つあるトランスフォーマーを動かすのに、君の手を借りたいと考えるのは当然だろう。…言うなれば、天秤のバランスをとるためだ」

スパイク「待ってくれ。つまり、そのトランスフォーマーを既に見つけているという事か?それは一体誰なんだ?!」

(建物の中に入ったスパイクを待っていたのは…)
やっと登場

(第1話 終わり)


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