#182-187 「宇宙海賊」 SPACE PIRATES!

「セイバートロン星は我等の物・・・」#182 PART1
 地球暦2008年、惑星クインテッサ(※1)は滅亡の淵にあった。 軌道の減衰により、惑星がまさに太陽に引き込まれようとしていたのである。 クインテッサの長、ロード・クレッジは、他の惑星を植民地化する計画を断念し、代わりの計画に全エネルギーを注ぐように命じる。 ・・・クレッジの部下、セバックスが進めていた植民地化計画、それには侵略に適した機械惑星の情報が必要であった。 しかし、その情報ディスクを積んだカプセルは宇宙嵐に遭い、惑星ジャンキオンへと漂着してしまったのである。 クインテッサ達は回収を試みたものの失敗、カプセルは再び宇宙に消えてしまう。(※2) 次いで彼等はセイバートロン星へ向かう途中のレック・ガーを拉致し、カプセルのありかを拷問したものの未だ答えを引き出せず(※3)、結局危険を伴う第二のプランを実行に移さざるを得なかったのである。
 一方、用済みとなったレック・ガーは衛兵によってシャークトロンのプールへと連行されて来たが、そこで、衛兵をプールに突き落として脱走。 海岸にあった船を奪って逃げ出すものの、海の中にもシャークトロンは放たれていた。シャークトロンに囲まれ絶体絶命のレック・ガー!
 その頃、ジェネラル・ギリック率いるクインテッサ宇宙艦隊は計画の第一弾として、ある目標へ向かっていた。 第一のターゲット、それは地球のサイバトロンシティー・・・。

※1:コミック版でのクインテッサ星人にはトランスフォーマーの生みの親という設定は無い。ユニクロンの配下として、ユニクロンの手を逃れようとする者達を捕え、処刑するのがその役目。

※2:TV版「2010年の大放送」(邦題)とほぼ同じストーリー。米版43号及び英版180、181号にコミック化されている。但し、海外ではTV版、コミック版とも2006年の設定。

※3:英版では更に、上記のストーリーを、クインテッサに捕えられたレック・ガーが語ったものとして設定、冒頭とラストに描き下ろしのページを設けて説明している。 なお、レック・ガーにこれ以上の事を語らせる事の出来なかった雇われの拷問係は、例によって無罪の死刑にされてしまう。


アーシーの最期?#183 PART2
 地球、サイバトロンシティー、警備の任にあたっていたアーシーは退屈していた。ついに彼女は任務を放って軽い気持ちでドライブに出てしまう。 その様子を上空から伺っている者達がいた、ギリックらクインテッサの軍勢である。そして、攻撃が開始された・・・。
 地上と空中からの電撃作戦により数に劣るサイバトロンは次々と倒され、シティーを戦闘モードにトランスフォームさせようとしたブロードキャストもギリックの手により倒されてしまう。 だが、ギリックの本当の狙いは有機体惑星である地球そのものではなく、トランスフォーマーの故郷、セイバートロン星の侵略だったのである。

 一方、クインテッサ星では、シャークトロンの群れに囲まれたレック・ガーの元へ救いの手が差し伸べられる。 ロディマスコンボイの命で小型宇宙船に乗ってクインテッサ星の偵察に来ていたウィーリーである。 ウィーリーはレック・ガーに休むよう勧めるが、彼はサイバトロンにクインテッサの陰謀を伝えなければならない、とそれを拒む。

 地球では、思いきり走ったアーシーが心のもやも取れ、シティーに戻るところであった。 昔であればホットロディマスも自分と行動を共にしていた事だろうと彼女は思った、だが、彼は今やサイバトロンの司令官ロディマスコンボイ、任務放棄の事実を知れば彼女を軍法会議にかける立場である、そんな二人の仲(※4)が寂しかった。
 彼女がシティーに戻った時、シティーは既にクインテッサの手中にあった。自分の責任だと感じたアーシーは、その埋め合わせをすべく単身乗り込もうとする。おそらく敵は自分が居なかった事に気付いてない筈・・・だが、そうではなかった。 待ち伏せに遭い倒されるアーシー。 クインテッサの次なる目的、それは、アーシーを利用してマトリクスを奪い、ロディマスコンボイを破壊する事なのだ!

※4:コミックス版では彼女とスプラングとの関係は無く、むしろホットロディマスと互いに惹かれ合いながらも素直になれないという関係にあったとか。


一体何が起こっているのか!?#184 PART3
 惑星ジャンキオンでは、ジャンキオン一族がセイバートロン星のロディマスからの通信を受けていた。 先に彼等のリーダー、レック・ガーはロディマスに対し、重要な情報をセイバートロン星へ持って行くと伝えていたが、彼からの連絡がそれ以来途絶え、その居場所を問うてきたのである。 ジャンキオン達の説明は相変わらずテレビ用語だらけで要領を得ず、「放送終了時間」という事で一方的に通信を切ってしまう。 彼等の信頼を得られていないのかと悩むロディマスコンボイ。 そんな所へ地球のサイバトロンシティーを呼び出す事が出来ないという報告が入る。 レック・ガーの失踪、地球との交信途絶、一体何が起こっているのか?

 その地球ではサイバトロンシティーを占拠したジェネラル・ギリックの元へ、ロード・クレッジからの伝令が届いていた。 現在地球に向かっているサイバトロン艦隊の先行監視ドロイドに見せつけてやる劇的な光景を用意せよ、との事である。 使者に対し、計画の第二段階の準備を尋ねるギリック。 それはセイバートロン星で行なわれていた・・・。

 セイバートロン星では現リーダー、サウンドウェーブ率いるデストロン軍団がオートベース(サイバトロン基地)への攻撃準備を進めていた。 サイバトロンの攻撃に対しクインテッサを援助する事を約した彼等だが、真の狙いはクインテッサ星攻撃のために手薄になったサイバトロンの基地を乗っ取る事である。 だが彼等はまだ、自分達こそクインテッサの触手の上で踊らされているのだという事に気付いていない・・・。

 クインテッサ星の周囲では脱走したレック・ガー達を逃がさぬようセバックス配下の艦隊が航路を封鎖していた。 もし、彼の握る情報がロディマスに届けば、それはクインテッサという種族そのものの破滅を意味するのである。 だが、ウィーリーとレック・ガーにしても座して死を待つ事は出来なかった。決死の覚悟で飛び出し、攻撃にさらされながらも非常用ブースターによって何とか外宇宙に出る事に成功する。もっともエンジンのダメージは深刻でいつ爆発するか分からない状態ではあったが。

 一方、地球への到着を数時間後に控えたロディマスコンボイ率いるサイバトロン艦隊では、先行監視ドロイドから送られた恐るべき映像を目の当たりにしていた。 サイバトロンシティーの壁一面に磔にされたサイバトロン戦士達のボディー! 一体何があったのか!?


もはや道は無い!#185 PART4
 セイバートロン星ではついにデストロン軍団が進軍を開始した。 メガトロン、レーザーウェーブ、他のどのデストロンリーダーも為し得なかったセイバートロンの完全征服という悲願がが、今、彼サウンドウェーブの指揮の下、達成されようとしているのだ。 だが、彼の夢も長くは続かなかった。 突如として背後からクインテッサの攻撃艇が襲ってきたのである。 敵は空中のみならず地中からも伏兵部隊が現れた。彼等は完全にクインテッサの罠の中に飛び込んでしまったのである。

 クインテッサ星では破滅の時が刻々と迫っていた。地球ではジェネラル・ギリックがサイバトロンシティーを占拠しロディマスコンボイらを迎え撃つ準備を進め、セイバートロン星ではジェネラル・ジョラップがデストロンの壊滅作戦を開始したとの報が入っていた。 全ては彼等の計画通りに運ぶかと思われたが、唯一の例外はレック・ガーの逃亡である。 クインテッサの警備隊に追われるレック・ガーとウィーリーの宇宙船、エンジンはもう限界に達しようとしていたが、レック・ガーには妙案があった。 ジャンキオンの「あなたがここにいてくれたら」の番組チームが近くのデルタ6・クアドラントの小惑星を訪れているというのだ。

 一方、セイバートロン星のオートベースでは奇妙な通信を受信していた。 内容はエイリアンに襲われているセイバートロンの住民が救援を求めているのだと思われるが、妨害が激しいのか、何者が送ってきたのか定かではない。 ロディマスの留守を預かるウルトラマグナスはどうしたものかと考えを巡らせる。
 それは、サウンドウェーブからの通信であった、救援が来たところで事実を知ったサイバトロンが自分達と手を組むかと疑うジャガーであったが、サウンドウェーブは「奴ラハ来ル、来テ我々ト手ヲ結ブ」と答える。今はそれを信じるしか無かった・・・。

 そして地球、サイバトロンシティーに着いたロディマスコンボイは瀕死のアーシーを発見する。 マトリクスの力で彼女を助けようとするロディマスコンボイ。 だが、それこそ狡猾な罠であった。 クインテッサは彼がマトリクスを体内から取り出したところを背後から襲い、マトリクスを奪われたロディマスコンボイはかつてのホットロディマスの姿に戻ってしまったのである!


あー、よく寝た#186 PART5
 ホットロディマスはアーシーを守りながらサイバトロンシティーの通路を逃げていた。未だ傷の癒えないアーシーは自分を置いてマトリクスを取り戻しに行くようロディマスに頼む、そうしなければ、クインテッサの次の標的はセイバートロン星となる事だろう。
(サイバトロンを守るために彼女を犠牲にするべきなのか?)
ホットロディマスは悩む。
(ロディマスコンボイとしてならそう決断したかも知れない。だが、俺は今ホットロディマス、チャーにはいつも引き際を知らない奴だと言われていたよな・・・)
二人を追うクインテッサ兵達にエレクトロレーザーを撃ち返すロディマス。
(言ってやろうか、俺は今だって引くつもりなんかないぜ!)
エレクトロレーザーは天井を崩し、二人はクインテッサの追跡を振り切る事に成功する。 カーモードに変形し、アーシーと共に屋上へ向かうロディマス。 シティーの壁には倒れたサイバトロン戦士達が磔にされていた、その中の一人、ブロードキャストにロディマスは近付く、そう、クインテッサには見過ごされていたが、彼の中にはセイバートロン星にいるイジェクトを除く、リワインド、アムホーン、スチールジョーの3体のカセットボットが収納されていたのだ。

 セイバートロン星ではクインテッサの攻撃にさらされたデストロン軍団の敗色がいよいよ濃厚になっていた。 だがそこへついにウルトラマグナス率いるサイバトロンの救援隊が到着する。 ウルトラマグナスはクインテッサをサイバトロン・デストロン双方にとっての脅威であると判断し、デストロンと協力する事を決める。

 一方何とかクインテッサを追跡を逃れたウィーリーとレック・ガーはシャトルを捨て、小惑星へ降り立つ。 ここにレック・ガーの仲間のジャンキオン達はクインテッサのメッセージカプセルと放送機材を用意していたのだ。レック・ガーはついに大放送のスイッチを入れる。

 そして地球、アーシーとカセットボット達はクインテッサを格納庫に引き付けていた。 その間にメインコントロールルームに進入するホットロディマス、彼の目的はあるボタンを操作する事であった。 そこへ現れるジェネラル・ギリック、彼はロディマスに襲いかかるが、ロディマスは既に装置を起動させていた。 サイバトロンシティ-全体を揺るがす振動、自爆装置であろうか? そうではない、サイバトロンシティーがトランスフォームを可能としているのはその中枢が一人のトランスフォーマーであるからなのだ。
 彼はホットロディマスの手で目覚めた、その名は・・・
メトロフレックス!!


マトリクスの主#187 PART6
 目覚めたメトロフレックスのパワーは凄まじかった。 勝利をほぼ手中に収めていたクインテッサの軍勢は瞬く間に壊滅させられていった。 もはや敗北は必定かと思われたギリックであったが、彼には最後の切り札があった。 それはロディマスから奪ったマトリクス、彼がマトリクスを使う事を阻止せんと後を追うホットロディマス。

 一方クインテッサの真の標的、セイバートロン星では、サイバトロン・デストロンの連合軍により、ついにクインテッサ軍は敗北する。
「もし、クインテッサがお前達を倒していたら、次は我々が奴等の攻撃の目標だっただろうな。」 敗走するクインテッサの艦隊を見上げながらサウンドウェーブに語るウルトラマグナス。
「借リガ出来タナ、ウルトラマグナス、我々ダケデハ奴等ニ壊滅サセラレテイタ事ダロウ。ダガ、サイバトロント協力シタ事デ・・・」
サウンドウェーブはそこで言葉を切った。
「俺ハ・・・イヤ、イズレニシテモソウ長クハ続クマイ。 我々ノ間ニハ余リニ多クノ事ガ起コリ過ギテイル・・・。」
そして彼は仲間のデストロンと共に去っていった。
ウルトラマグナスは彼の言葉の正しい事を理解していた、それこそこの戦いの本当の悲しさなのだという事も・・・。

 その頃、レック・ガーによって発信されたクインテッサのメッセージカプセルの内容が、クインテッサの植民地化の標的となる筈だった数百の機械惑星に送られていた。 ここにクインテッサは全宇宙を敵に回す事となったのである。

 そして地球、マトリクスのパワーを身に付けたギリックが一人、敗北を拒み続けていた。 メトロフレックスすら破壊しうると豪語するそのパワーの前に圧倒されるホットロディマス。
(そうだ、マトリクスが無ければ俺は只の無鉄砲な若造に過ぎない、力も無ければ分別はもっと少ない)
倒され、床に這いつくばりながらロディマスは思った。
(何故マトリクスは俺をサイバトロンのリーダーに選んだのだ?何故なんだ?)
ギリックが彼を足蹴にする。苦痛に耐えながらロディマスは自分に問いかける。
(だがマトリクスは確かに俺を選んだのではなかったか?最も偉大なサイバトロン、コンボイ司令官の跡を継ぐ者として俺を! 俺に何かを感じた筈なんだ・・・)
ギリックはいよいよロディマスにとどめを刺さんと腕の銃口を向けてきた。
(多分それは・・・そうだ!俺にはちょっとした想像力がある、多分マトリクスがそれを叡智へと変えてくれたんだ!)
戦いの場にはアーシーも駆けつけていた。
(力じゃなく頭を使うんだ!・・・そうだ、いつもチャーを引っかけていたあの手が・・・)

「ギリック!」
突然の背後からの声に振り向くクインテッサの指揮官、だが、後ろには誰もいない。
それは人間が腹話術と呼ぶトリックであった。発声回路のバイパスとエコーセルによってむしろロボットの方が扱いやすい芸当である。 一瞬の隙を突いてギリックの胸からマトリクスを奪い返すホットロディマス!
「今こそホットロディマスにもう一度別れを告げる時、そしてロディマスコンボイが代わって立ち上がる時なのだ!」
ロディマスコンボイの前にはクインテッサの一体など敵では無かった・・・。

 代償は大きかったが戦いはサイバトロンの勝利に終わった。

 滅び行く惑星クインテッサでは、ロード・クレッジが生き残った兵士達に最後の指令を発していた。 戻ってはならない、クインテッサに戻る事は確実な死を意味する。 いつの日かセイバートロン人に報い、最後の勝利をクインテッサの物とするために!

 ・・・それから数ヶ月後、サイバトロンの科学者たちはクインテッサ星の予想より早い滅亡は、時空間の断層の急激な拡張(※5)によるものと発見する事になる。 そして、その時からでは既に手遅れであった・・・。

THE END?

※5:これは、ガルバトロンをはじめとする未来世界のデストロンが、現代世界(1980年代)に長く居座ったためにおこったもの。この断層の拡大による全宇宙の破滅を防ぐべく、やがて「タイムウォーズ」と呼ばれる戦いが始まる事となる。


BIG BROADCAST OF 2006

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